私事で恐縮ですが、バリ島へ行ってまいります


私事で恐縮ですが、バリ島へ行ってまいります。


ナチュラル詩吟教室を始めるより前から、neohachiという詩吟とシンセサイザーの二人組ユニットでライブ活動をしておりまして、CDをリリースしたり、韓国でライブをやったりしています。


今年5月には、三重の山の中の馬場でライブを行いました。


上記動画でその様子がご覧いただけますが、百人一首で有名な「春過ぎて〜」で始まる持統天皇の和歌を歌ったりしています。(『LOVECADIO HEARN』というCDに収録されています


neohachiのモットーは、詩吟を広めるためにやっている、ということでは一概にはないということ。楽しくやること。とにかく自分たちが信じる好きな音楽をやることです。


ナチュラル詩吟教室では詩吟を広めるためにやっているのに、なぜそんなことを言うのかというと、 詩吟とは言え、世界中の土着的な音楽(所謂ワールド・ミュージック)でありたいと常に願ってるからです。私は日本が好きだからこそ、ニホンというものにしばられたくないと思っています。


私が狂ったように詩吟に熱中していた若い頃、もちろん今でもそうですが、どんどん世界がせまくなってくるような危機感を感じていました。詩吟(邦楽)では五音階しか使わず、メロディはほとんど決まっていて、微妙に平均律(ドレミ)ともずれていて、洋楽器と合わせるのが難しい。


例えば鍵盤やギターなどの洋楽器とのセッションによる一体感から得られる幸福感に、なかなか到達できない。かと言って、詩吟だけの世界にとどまりたくない。


うーん。一体どうすれば……、と悩む日々がありました。


そんな時、たまたまテレビでみた、チベットの民族の歌に衝撃を受けました。


なんと、詩吟とそっくりなのです。


しかも、屋外の草原というか荒れ地の、住居と思われるテントの脇の広場で、円になってみんなで、それはそれは楽しそうに生き生きと歌っている。それが本当に素晴らしくて感動的で、かつ詩吟の発声とメロディにそっくりだったのでした。


それを観て私は、感動のあまり涙がボロボロと流れました。


同じことをやっている人が外国にもいる。しかも、野外で、そして、楽しそうに……。


そこで私は確信しました。


ああ、詩吟は民族音楽なんだなあ、と。


五音階しか使わない詩吟は、世界中の民族音楽とほぼ同じです。それでも、現代の日本の中では、十二音階とか或らゆる音楽に追いやられて肩身のせまい思いをしている、と私が勝手に思っていたのでした。


それを経て、私はむくむくと自信が湧いてきました。これでいいのだ、と。


いろいろ調べていくと、或らゆる国で、民族音楽と現代音楽が交差して、カウンター・カルチャー(前世代を否定する)があって、どんどん新しい音楽や古い音楽が交互に折り混ざって、その時代時代に楽しむことをしている、ということがわかりました。


私が無理をして反抗的に詩吟以外のものに目が向いているのではなく、それはごく自然なものだということがわかりました。確かに前世代を否定するパンク精神的なものがなかったわけではありませんが、もはやそのような破壊的な思想はありません。


だから、詩吟とシンセサイザーと言っても、詩吟(ニホンの伝統芸能)と〇〇の融合、といった奇をてらった気持はありません。ただ、いいと思って好きな音楽を紡ぎだしている、ただそれだけです。伝えたいメッセージもありません。


しいて言えば、誇りはあるけれども、うちの国の伝統音楽だから凄いでしょ、というような傲慢にはなりたくないという意味で、国境を越えていいものはいいねえ、という共有ができれば幸せかなーと思っています。


neohachiの私含めメンバー二人ともそれぞれ仕事(相方はウェブデザイナー、私は詩吟講師)を持っているので、どうにか音楽活動で食っていこうという無理をせず 、楽しくマイペースにやってはいるのですが、赤字になっては本末転倒なので、ある目標を立てました。それは、


「ギャラを貯めてバリ島へ行こう!」


というものでした。


なぜ、バリかというと、単純にリゾートで思いっきり遊びたいというのもありますが、私は学生時代にバリに行ったことがあって、そのときに、古典で民族音楽であるガムランが街中に響いていて、街中の子どもから大人までみんなが練習している。聞けば、日々新しい曲が生れているという。


伝統音楽を守る、ということにしばられていない、その日常にある古くより伝わる音楽のあり方にいたく感銘し、詩吟もこうあれたらいいな、と思ったのでありました。


それからずっと、バリへの憧れがありました。


そしてこの度、neohachi結成10年にして「ギャラを貯めてバリ島へ行こう!」の夢が叶うこととなりました。


初めは笑い話で、まさかとは思っていましたが、本当にこの度、まさか行けることになりました。まあ、激安ツアーではありますけれども、夢が叶う喜びというのは、ちょっと何とも信じ難いものです。


こういうことってあるんだ……、という。


ということは、もっと頑張って次はドイツへ!なんてさらなる欲がでたりして。



ところで、10月にはアメリカで詩吟ライブをしてきます。こちらはまじもんの文化交流です。


詩吟の価値が歴史的(戦中戦後も含め)にみてどれほどだったのか。そして、今はどうなのか。それから、今後どうすればいいのか、についてよく考えています。そのためにも、広い視野を持ちたいと思っています。


というわけで、せっかくなので、一発詩吟を吟じてこようと思います。


バリで。


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