お花見シーズンにさきがけて、お花見で吟じたい詩吟をご紹介します。まず、一つ目は与謝野晶子のとってもロマンティックな和歌です。
清水へ 祇園をよぎる 桜月夜
こよひ逢ふ人 みなうつくしき
(「桜月夜」与謝野晶子 1878〜1942)
二つ目は、江戸時代の国学者、本居宣長の和歌です。”やまとごころ”というと武士っぽいイメージがありますが、実はその逆で百人一首にあるような艶っぽい恋心をもった心のことという説もあります。
しきしまの 大和心を 人問わば
朝日ににおう 山桜花
(「山ざくら」本居宣長 1730〜1801)
最後に、江戸中期の学者、新井白石の漢詩「春日の作」をご紹介します。
楊柳花飛んで 江水流る
王孫の草色 芳洲に遍し
金罍の美酒 葡萄の緑
青春に酔わずんば 愁いを解かざらん
(「春日の作」/新井白石 1657 〜 1725)
▼通釈:
楊柳の花はさわやかな春の風に吹かれて大川の水面に飛び、水は静かに流れて行く。つくばね草の若やいだ春の色が、芳しい花の咲く川の洲一面に広がっている。黄金色の酒樽の美酒と葡萄酒を大いに飲もうではないか。季節もうららかな春の日に、大いに飲んで酔わなければ、この愁は吹き飛んではくれないだろう。
▼私の解釈:
のどかな春の日に、のどかだからこそ沸き上がる憂鬱。のどかでぼんやりしていると、ほわほわーと過去の嫌な事が思い起こされてしまう……。これは平安時代からの歌語とされる「春愁」という概念でもあるそうです。そんなときこそ、この詩の最後にある「青春に酔わずんば 愁いを解かざらん」。つまりは、大いに飲んでその憂さを晴らそうぜ!というような心持ちで大きな声でこれを吟じると、想像以上にスカッとします。
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