詩吟の吟じ方

◆詩吟を"吟ずる"とは?

吟とは、「吟は呻きなり、呻きは吟なり。(後漢時代の辞書)」とあります。

"吟"という字には"含む"という意味があり、音を出すという意味合いに加えて呻く(うめく)ことを言います。つまり、体の芯から凝縮された声を出します。

こころの中にある純粋な感興が、抑えようとしても思わず口からでてしまう言葉(詩)を長く引いて、呻くように声となって発せられるのが詩を"吟ずる"ということであります。


◆詩吟の音楽的特徴

歌は言葉を音階にのせて表現しますが、詩吟は詩(熟語)を読み下し、その語尾の母音の余韻を長く引きます。詩を読み下すとは、朗読に最も近く音楽性は希薄です。しかし余韻は正確な音程を必要とし、音曲性が強く求められます。

①詩吟は民族音楽

詩吟は邦楽五音階(ミファラシド)で吟じます。西洋の12音階ほど定まってはいませんが、世界の民族音楽の多くは五つの音階で成り立っており、発声方法も詩吟のそれに近いものです。

言葉が発達する以前から「心のうちを表現すること」=「体の芯から凝縮された声を出す」ことが、人間の本質的な欲求であることを感じざるを得ません。

②「間」がリズム

詩吟には決まったリズムはありませんが、邦楽の世界では間拍子といって「間」がリズムと考えられています。意表もつかないタイミングで発せられる声が、人の心をつくとも考えられます。


◆詩吟発表の形態

詩吟を発表する際は、独吟、合吟、連吟、二部朗詠なるの形態で吟じます。

①独吟 〜 会場を声の響きで満たせ

現在の詩吟発表形態のほとんどが独吟といわれるものです。独吟とはひとりで吟ずることです。即興的に琴や尺八の伴奏がつくこともありますが、伴奏との調和より、どれだけ吟者ただひとりの声が会場に響き渡り、鑑賞者の感動をかっさらうかが求められています。

②合吟 〜 "息がぴったり"の実践

二人以上で全く同じ詩を同時に吟ずることをいいます。二人がほとんどですが、多いときには20人近くで合吟を行うこともあります。

"息が合う"とはこのことだと思えるほど、ぴったりに、全くひとつの音にしか聞こえないくらいに合わせることが求められます。いわゆる息が合っている人たちを見るとすがすがしささえ感じられるように、決まったリズムがないゆえ、完成された合吟にはある種の感動が起こります。

③連吟 〜 奥深きデュエット

連吟も二人以上で吟じます。合吟との異なる点は、ひとつの詩を一行ずつそれぞれが独吟し、最後の行だけ合吟をする(ここで大いに盛り上がる)といういわゆるデュエット形式であります。

④二部朗詠 〜 カエルもびっくりな複雑なからみ合い

二部朗詠とは、二人で同じ詩をずらしながら吟ずることをいいます。カエルの合唱のようでもありますが、異なった節(メロディ)で吟ずる部分も多いので非常に難易度が高いものです。しかしそれによって独吟や合吟ではなしえないハモリがうまれるので、音楽的にも楽しめることができます。