[3月]卒業式や送別会で吟じたい詩吟「行く春や」


3月は卒業シーズンです。お勤めの方も移動などで送別会がとり行われることも多いのではないでしょうか。そこで、卒業式や送別会で吟ずるのにおすすめの詩吟をご紹介します。


行く春や 鳥啼き魚の 目は泪
ゆくはるや とりなきうおの めはなみだ

(「奥の細道」旅立より/松尾芭蕉 )

友人の解釈:春が来て、旅立つ友を思い、鳥は鳴き、魚は目に涙をためました。私も泣いたり、叫んだりできたらなあ。


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さい先は明るいに決まっている、しかしながら別れるのは惜しい……、思い切って泣き叫び、しがみつきたい思いだが、笑顔で見送ることができるなら……。


松尾芭蕉が「奥の細道」に旅立つ折に弟子たちに向かって詠んだ俳句です。


曲調は民謡のように明るく、曲の長さも短く1分もかからず吟じ終わるので、スカッとしてあとくされがなく余興にぴったりです。


私は送別会などがあるとこれをよく吟じるのですが、吟ずる前に一度朗読をして、なおかつ、詩の内容について簡単に説明してから吟ずると、詩吟を初めて聞くという方とも、別れや旅立ちへの思いを共有することができ、大変喜ばれます。


しかしながら実はこの詩、鳥が啼いて魚の目もうるんで泣いているようだ、というので悲しみを表現しているのだというのはわかるのですが、よく意味がわかりませんでした。そんな中、私がこれを送別会で吟じているときに一緒にいた友人が、「私はこう思う」と上の解釈を教えてくれました。


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先日のお稽古中、大学で教鞭をとられている生徒さんから、「学生を送り出すのに合う詩吟はありますか?」という質問を受けて、急遽、松尾芭蕉の「行く春や」を稽古することになりました。


彼は詩吟を始めてもうすぐ丸2年。最近ご家族にも「上手くなった」と褒められたそうで、いよいよ詩吟を知らない学生たちの前で披露しようというお気持ちになられたのかと思います。


実際稽古してみると、とても伸びやかで、普段稽古している詩吟とは別の何かのようにさえ感じました。やはり、目的があって、誰かのために心を込めて吟じる、ということは、詩吟そのものを感動的にしてくれるように感じます。


それはなぜか。


相手に届けようとすると、ものすごく集中して、お臍の下の丹田が本能的に働き、人に伝わるいい声が出るようになるからです。


きっと詩吟に触れることが始めての学生も多いことでしょう。先生のアレは何だったんだと仰天するかもしれません。しかし、何十年か後に詩吟をやってみたくなるかもしれません。


そもそも詩吟は言葉です。誰かに思いを伝えるために吟じるというのも、伝統文化の在り方のひとつに思います。


さて、しみじみしてしまいそうな卒業式や送別会などで余興に、この「行く春や」大きな声で吟じて、元気よく送り出してみてはいかがでしょうか。


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