[4月]桜咲いちゃいましたね詩吟「春眠暁を覚えず」


あっという間に桜が満開。もはや散りはじめています。先日のレッスンで「桜咲いちゃいましたね」談義が花を咲かせました。来週にお花見の予定を入れている生徒さん曰く、


「でも明日雨らしいじゃないですか。散っちゃいますよね〜」


とのこと。まったくしかり。かく言う私も、ろくにお花見もせず桜を見逃してしまいそうな予感です。気を取り直してレッスン。桜満開、春到来、ということで春らしい詩をレッスンすることになりました。


春眠不覺曉 春眠暁を覚えず
處處聞啼鳥 処処啼鳥を聞く
夜来風雨聲 夜来風雨の声
花落知多少 花落つること知んぬ多少ぞ 


今から1300年以上前、唐の時代に生きた詩人、孟浩然(689-740)の五言絶句「春暁」という漢詩です。「春眠暁を覚えず(しゅんみんあかつきをおぼえず)」のフレーズは聞いたことがあるかと思います。春日和に仕事中うっかりうたた寝してしまったときの言い訳として重宝されているアレです。


「いやー、"春眠暁を覚えず" ってね。すまんすまん! 


とか言って。知らない輩は使ってみてください。以外と見逃されること請け合いです。なぜこの言い訳が効くかというと、


「春はぽかぽかでねむくなっちゃうよね〜」(そうですねー!)


というグタグタな解釈がまかり通るからです。実際に訳すと、 暁は夜明けのことで、


春の眠りは心地よく、うっかり寝過ごし、夜明けに気付かない。」


ですから、まったく昼寝の言い訳にはならないのですが、言葉の響きの美しさにかこつけてゴリ推しです。さてこの続き、

処処啼鳥を聞く(しょしょていちょうをきく)  
ーところどころで鳥がさえずっている


寝坊して起きてみると鳥がチュンチュン鳴いている、さしずめ天気が良さそうだ、とのんきなことを言っています。まあ、ここまではイメージ通り。この後が注目です。


夜来風雨の声(やらいふううのこえ)
ーそういえば、昨夜は風雨の吹き荒れる音がした。


え?もしかして雨降っちゃったの!?


花落つること知んぬ多少ぞ (はなおつることしんぬたしょうぞ)
せっかくの花がどれほど落ちたことか。


まじで!?お花見できないじゃーーーーーん!!!!!


というわけで、何か知らないけど「明日雨降って花が散っては困るーー!!!」的なところが孟浩然とめちゃくちゃシンクロした気分になってしまいました。状況が同じ過ぎるではないか……と。レッスンしながら、ちゃぶ台ひっくり返す勢いでした。


なんか、うまいことまとめると、ウトウトしている間に良いことは去って行きますから気をつけなんし、と言われているようですが、そんなのほっとけ!春は眠いし、雨が降って花見ができないと困るんじゃーーー!という(私の解釈)わけです。


今までこの詩は何回も吟じてきたはずなのに、今日ほど胸にグッと来た日はありませんでした。

 
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